2026年度診療報酬改定における「人工腎臓(透析)」




⚖️ 2026年度診療報酬改定速報:透析医療の評価見直しと加算新設

慢性維持透析の基本点数引き下げと、「腎代替療法診療体制充実加算」の詳細解説

厚生労働省は、2026年度(令和8年度)診療報酬改定において、「人工腎臓(透析)」関連の項目に関して広範な評価の見直しを実施しました。本改定の骨子として、慢性維持透析の所定点数が一律で引き下げられる一方で、特定の施設基準を満たすことで算定可能な加算が新設され、実質的な点数水準の維持には体制の整備が必須となる構造が明らかになりました。

🏥 主要な改定項目と点数調整

1. 人工腎臓(透析)の評価見直し (J038)

🚨 点数構造の変更:引き下げと加算による相殺

慢性維持透析の所定点数(J038)は、すべての区分で一律20点引き下げられます。しかし、これと同時に「腎代替療法診療体制充実加算」(20点)が新設され、この加算を算定できれば従来の点数水準が維持される設計となっています。

引き下げ後の所定点数(例)

  • 4時間未満: 1,876点 → 1,856点 (-20点)
  • 4時間以上5時間未満: 2,036点 → 2,016点 (-20点)
  • 5時間以上: 2,171点 → 2,151点 (-20点)

新設:「腎代替療法診療体制充実加算」(20点)の要件概要

この加算は、人工腎臓を実施した場合に算定可能であり、特に災害対策患者への十分な説明、および連携体制の整備を評価するものです。

  • 災害対策: ハザードマップによるリスク把握、マニュアル作成、情報伝達訓練(年1回以上)への参加。
  • 説明責任: 腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)について、患者ごとの適応に応じた説明を繰り返し実施。
  • 実績要件: 在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定実績(年24回以上)または腎移植に向けた手続きの実績(年2人以上)のいずれかを有すること。
  • 連携体制: シャントトラブル時に連携医療機関で迅速に治療を行う体制の整備。

2. 経皮的シャント拡張術・血栓除去術の適正化 (K616-4)

シャントの維持管理に係る手技の評価が見直されました。特に、緊急性の低い通常の狭窄に対する点数が引き下げられ、閉塞や高度な狭窄に対する評価との差が明確化されました。

【初回実施時の点数区分】

  • 透析シャント閉塞または高度狭窄の場合: 12,000点(維持)
  • (要件:シャント血流量400ml以下または血管抵抗指数(RI)0.6以上など)
  • その他の場合(通常の狭窄等): 9,840点(引き下げ)

3. 腹膜透析の連携推進 (C102)

腹膜透析の導入・維持管理において、基幹病院とかかりつけ医の連携を促進するため、新たな管理料が新設されます。

🆕 「在宅自己腹膜灌流指導管理料2」(1,500点)の新設

腹膜透析を導入した基幹病院が、他のかかりつけ医の求めに応じて指導管理を行った場合に算定可能です(一連の治療につき2回限り)。これにより、地域での腹膜透析患者のサポート体制強化が期待されます。

4. 入院料における包括範囲の見直し(出来高算定への変更)

透析患者の受け入れを促進するため、一部の病棟入院料について、人工腎臓等の手技料が包括範囲から除外され、出来高算定が可能となります。

✨ 透析患者受け入れ促進のための措置

【対象となる病棟】

  • 地域包括ケア病棟
  • 回復期リハビリテーション病棟
  • 精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神療養病棟など

【出来高算定が可能となる項目】 人工腎臓(J038)、腹膜灌流(J042)、およびこれらに係る特定保険医療材料。

📄 「腎代替療法診療体制充実加算」詳細:施設基準と猶予期間

従来の点数水準を維持する上で鍵となる「腎代替療法診療体制充実加算」を算定するためには、厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生局長等への届出が必要です。

1. 満たすべき施設基準(3つの必須要件)

  1. (1) 災害対策の実施体制
    • ア. マニュアル作成: ハザードマップに基づき、自院のリスクを把握し、災害対応マニュアルを作成。
    • イ. 訓練への参加: 日本透析医会等による情報伝達訓練に年1回以上参加
  2. (2) 腎代替療法に関する説明と実績
    • 説明の実施: 血液透析、腹膜透析、腎移植について、患者の病状や求めに応じて繰り返し説明を行う。
    • 実績要件(いずれか必須):
      • 腹膜透析: 「在宅自己腹膜灌流指導管理料」を過去1年間で24回以上算定
      • 腎移植: 腎移植に向けた手続き(登録、先行的移植等)を行った患者が前年に2人以上いる。
  3. (3) 連携体制の整備
    • シャントトラブル対応: シャント治療(経皮的シャント拡張術等)が必要な場合、自院で対応できない場合は、連携医療機関と事前に体制を整備し、診療情報を提供する。
    • (望ましい要件) 緩和ケア: 緩和ケアを必要とする患者に対し、適切な治療・ケアを提供できる体制が整備されていること。

2. 経過措置(猶予期間)について

新設された基準への対応時間を考慮し、一部の要件には準備期間が設けられています。この期間内に体制を整えることを前提に、届出を行うことが可能です。

🔔 経過措置期間の詳細

  • 災害対策(マニュアル・訓練): 令和9年(2027年)5月31日まで
  • 実績要件(腹膜透析または腎移植): 令和10年(2028年)5月31日まで

※ 現時点で実績要件等を満たしていなくても、上記期間中は基準を満たしているとみなされます。

(情報提供:医療政策分析チーム 2026年改定対応版)