日本透析医学会および日本血液浄化技術学会からの注意喚起文(PDF)

透析関連装置及びその配管系統を適切に管理するためには、施設の実情に合わせた洗浄消毒の実施が不可欠です。洗浄消毒には、次亜塩素酸ナトリウム溶液および酸性溶液が交互に用いられるため、極めて厳重な管理が求められます。

昨今、透析施設において次亜塩素酸ナトリウム溶液と酸性溶液の混合による塩素ガス発生事故が発生し、予てより懸念された事故が顕在化しました。塩素ガスは、濃度・暴露時間によっては生命を脅かす有毒ガスとなるため、極めて慎重な取り扱いを要する化学物質です。

複数の施設における塩素ガス発生事故に鑑み、再発防止に向けた以下の安全管理を徹底していただきたいと思います。

平時からの対策

安全管理

  • 透析液安全管理者は、作業方法の確認、使用状況の確認、対策用物品等を定期的に確認し記録する
  • スタッフに対する化学物質の取り扱いや自院で用いている次亜塩素酸ナトリウム溶液と酸性溶液の取り扱いについて、定期的に安全教育を行う

設備・設置

  • 各薬液タンクは、密閉した容器が望ましい
  • 各薬液タンクは、可能な限り離して設置する
  • 各薬液を機械室に保管する場合は、同一成分のタンク近くに配置する
  • 塩素ガス検知器の設置が望ましい(最大許容濃度 0.5ppm)
  • タンク近傍に中和剤を常備する
  • 誤投入時の対応手順書を作成しタンクの近くに貼り出す
  • 各薬液タンクには、製品の表示色に合わせた表示をし、視覚的な識別を促す
  • タンクの転倒防止策を講じる

補充時の注意点

  • 補充作業は、すべての治療が終わり患者が退室した後に行う
  • 十分な換気を行った上で補充する(次亜塩素酸は気化する性質を持つ)
  • 補充作業は2名で行い、指差呼称によるダブルチェックを励行する
  • 誤入時の発泡により容器から溢れるのを防ぐために、補充する量は少なめにする
  • 補充は、最初にごく少量を投入し、誤入によるガスが発生しないことを確認する

個人防護

  • 補充時:個人防護具(保護手袋、袖付きエプロン、密閉防護メガネ、サージカルマスク、長靴またはシューズカバーなど)を着用する
  • 誤入時:防毒マスク、防毒マスク吸引缶(ハロゲンガス用、塩素ガス専用)、耐薬品ゴム保護手袋、ゴム長靴、ガウンなど複数人数分を常備する(機械室から近い場所に設置する)

【塩素ガス発生時の対応と処置】

⚠️

応援を呼ぶ

🔄

直ちに換気を行う

🥽

防護具を装着

🧪

中和剤を投入

拡散を防止するため空調設備を停止

🚶

周辺にいる人や患者に避難を指示

🚒

消防署・警察署への連絡を検討