2025年度

第20回 愛知県臨床工学技士会学術大会

第三会場案内
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11:10~12:35 (85分)
組織強化部会企画 パネルディスカッション③

臨床工学技士のキャリアアップ戦略と多様な未来像

第3会場(802・803・804)
座長
  • 黒川 大樹(小牧市民病院)
  • 山城 知明(藤田医科大学病院)
パネリスト
  • PD3-1 酒出 篤弥(豊田厚生病院)
  • PD3-2 田島 志緒里(名古屋市立大学病院)
  • PD3-3 石田 沙織(春日井市民病院)
  • PD3-4 浅井 恵美子(東海医療科学専門学校)

抄録要約

PD3-1 酒出 篤弥(豊田厚生病院)
私の考えるキャリアアップ~修羅場体験がキャリアを磨く~

キャリアアップとは労働者がスキルや経験値を高め、経歴の価値や市場価値を向上させ、より高い地位や責任ある立場に進むことを意味する。4年目に転職後、スキルアップを目的に業務を拡大し、12年目と16年目に管理職に昇進。管理職としての血液浄化センターでの業務改善や患者からの悪質クレーム対応などの「修羅場体験」から医療人としての将来像や感性が形成された。他者理解の重要性を実感し、部門内コミュニケーション、他部署連携、患者対話推進、上司の期待と個人目標の擦り合わせがキャリアアップにつながると考える。キャリアアップは人それぞれの価値観によって内容が異なるため、実りあるディスカッションの場としたい。

PD3-2 田島 志緒里(名古屋市立大学病院)
私が考えるキャリアアップ

近年、臨床工学技士のキャリアアップの道は大きく広がっている。日本臨床工学技士会の「専門臨床工学技士認定制度」は技術職として専門性を高める王道のキャリアパスである。一方で、組織構築や運営に関与する道もあり、係長や技師長へとキャリアを重ね、マネジメント業務に携わることも選択肢の一つ。また、臨床現場での疑問や課題に向き合い、大学院進学を目指す道や、医療機器管理を通じて経営の重要性を実感し、経済学研究科や近年ではAI発展に伴いデータサイエンス学部に進学する選択肢も増えている。このセッションでは、臨床工学技士の多様な未来像と具体的戦略を共有し、働きながら大学院進学を考える方々の一助となることを願う。

PD3-3 石田 沙織(春日井市民病院 臨床工学技術室)
私の考えるキャリアアップ~理想と現実~

近年、社会情勢が目まぐるしく変化し医療現場も例外ではない中、「人生100年時代」と言われ労働価値観も多様化している。将来を見据えた具体的なキャリアデザインを考えた行動が必要とされている。大学病院入職当時の「理想」はジェネラリストを目指してスキルアップし、研究活動も行って博士号を取得することだった。生涯現役のPerfusionistを目指し、管理職の可能性は想像していなかった。しかし、所属病院や立場が変わると求められるものも変化し、病院経営や安全管理、人材育成など臨床とは別の分野にも関心が生じた。時代の変化、年齢やライフステージによって価値観も変わり、入職当時の理想と「現実」は異なるが、キャリアアップは人それぞれであり、キャリアプランは常に修正が必要だと感じている。このセッションを通じて若手会員がプラン設計するヒントとなることを願う。

PD3-4 浅井 恵美子(東海医療科学専門学校 臨床工学科)
私の考えるキャリアアップ ―養成校教員へのキャリアパス―

高校卒業後に東海医療科学専門学校に進学し、名古屋市内の総合病院で臨床工学技士として従事した後、母校の専任教員となった。当校は1992年に設立され、30年以上の歴史があり、東海地方を中心に多数の卒業生を輩出している。教員を目指したきっかけは海外ボランティアへの参加経験を学生に伝え、キャリアの選択肢として示したいと考えたこと。担当科目には医工学治療学、基礎医学実習、医学用語、代行装置実習などがある。養成校では臨床現場とは異なる用語や数値の確認、根拠ある教育が必要で、教員としてはまだ未熟だが、夢に向かう学生との時間にやりがいを感じている。臨床工学技士のキャリアは多様だが、この経験が皆様のキャリア形成の参考になれば幸いである。

12:40~13:40 (60分)
第3会場:共催セミナー③

『"加湿のチカラ、理想の呼吸"を目指して-F&P950が示す新しい加湿のかたち』

司会
  • 沖島 正幸(豊田厚生)
講師
  • 加藤 孝昭(名古屋大学医学部附属病院)
共催

フィッシャー&パイケルヘルスケア株式会社

13:50~15:20 (90分)
医工連携部会企画 教育講演

他業種から学ぶ業務改善のいろは~臨床工学技士が挑戦する業務改革~

座長
  • 小縣 良文(今池腎クリニック)
  • 井ノ口 航平(豊田会刈谷豊田総合病院)
講師
  • EL-1 田中 秀範(株式会社テルミック)
  • EL-2 森實 篤司(HOSPY腎透析事業部)
概要

本教育講演では、製造業やサービス業で実践されている業務改善手法(PDCA、Kaizen、リーンマネジメントなど)を臨床工学の現場へ応用するノウハウを学びます。外部視点による業務フローの見直し方や、チームワーク強化の鍵となるコミュニケーション技術を、他業種で実績を上げてきた講師陣が具体事例とともに解説。臨床工学技士が主体的に業務改革を推進するためのマインドセットと実践ステップを習得できます。

医療現場の効率化や品質向上が求められる中、他業種の改善手法を学ぶことは大きな価値があります。本講演では製造業やサービス業で培われた効果的な業務改善の方法論を、医療現場、特に臨床工学技士の業務に適用する方法を具体的に解説します。これからの医療における業務改善のリーダーシップを担うために必要な視点と実践的知識を得ることができる貴重な機会です。

抄録要約

EL-1 田中 秀範(株式会社テルミック)
他業種から学ぶ業務改善 ~製造業の視点から~

株式会社テルミックは愛知県刈谷市に本社を構え、主に金属の機械加工全般を手がける製造会社です。従業員数は海外子会社を含め170名で、その約7割を女性従業員が占めています。田中氏は、製造業における業務改善の実践者として、リーマンショックを契機に取り組んだ「3ゼロアクション(残業ゼロ・ルーティンゼロ・紙ゼロ)」の成果と導入プロセスを共有します。特筆すべき成果として、残業時間41%削減(年間約4,659万円相当)、紙使用量87%削減(年間約4,637万円相当)を達成。これらの取り組みにより、コロナショック時に売上が約4割減少したものの、わずか1年でV字回復を実現し、その後は過去最高の売上を更新し続けている実績を紹介します。データに基づいた業務分析手法と多職種チームでの改善プロジェクトの進め方について、具体例を交えて解説します。

EL-2 森實 篤司(HOSPY腎透析事業部)
透析業務における業務改革とAI活用

日本の医療現場は社会構造の複合的変容に伴い、深刻な構造的課題に直面しています。2022年時点で65歳以上の高齢者人口が総人口の29.1%を占め、生産年齢人口は2040年までに現在より約1,300万人の減少が見込まれています。森實氏は、このような環境下での透析業務における業務改革実例を中心に、生成系AIの活用による業務改善方策を提案します。特に、医学論文の効率的な検索・要約技術、日常業務効率化のためのプログラミング支援機能、医療文書の多言語間における高精度翻訳などの活用により、これまで膨大な時間と労力を要していた作業工程を飛躍的に短縮・効率化できる可能性について解説します。医療従事者が直面する日常的な課題に対して、すぐに実践可能なソリューションを提示し、医療現場におけるDXの実現可能性と生成系AIがもたらす業務改革の可能性を探ります。